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退職慰労金としての役員保険の移行手続きについて
No.1909

退職慰労金としての役員保険の移行手続きについて

お名前:ハッシー カテゴリー:その他の税金 知恵袋 質問日:2014年8月3日
一緒に10年前に創業した共同経営者にはめられて会社を乗っ取られてしまいました。
根拠の無い言いがかりの理由で取締役解任を進められ、反論はすれども、取締役と株主の多数派工作の上、取締役会で解任決議、株主総会で解任決議を承認されてしまい、昨年末に会社から放りだされてしまいました。代わりに、共同経営者の奥様が役員として、名前だけ入りました。
私は、共同経営者と同数の約半数近くをもつ大株主です。
相手方が株の買取を強く望むため、弁護士を通して、株の売買と退職慰労金等の交渉をずっと続けています。

退職慰労金について、充当するために掛けていた役員保険を全てもらうように交渉中です。
その際に、私が代表の別の会社(会社を作りました、まだ赤字です)に保険を移行しようと考えています。
知り合いのベテランの保険会社の方に聞くと、会社から会社に保険を譲渡(買取り)し、その買取り金額を退職金として個人に現金で支払う、と良いと聞きました。

保険は全部で下記11個あります。
 長期平準定期(1/2損金)2個
 逓増定期(1/2損金)1個 
 低返戻率逓増定期(1/2損金)3個
 ガン保険(全損)5個

継続後利益のでない長期平準定期1個、ガン保険4個は、未払い保険料をもらうために既に解約しています。逓増定期1個、ガン保険1個は、名義変更後、解約を予定しております。
保険の契約日は、低返戻率逓増定期1個の12月を除き、全て会社の決算月の8月末に集中しております。

1)上記スキームは法律的に何か問題はあるのでしょうか?
 保険屋によると、よくあるケースとの事です。
2)私、私の会社にとって一番節税になる退職金支払い・保険の移行の方法はどのような形でしょうか?
3)その具体的な節税項目(会社、個人)はどのようなものでしょうか?
4)下記 a. b. どちらが良いのでしょうか?メリットとリスクも教えて頂けると助かります。
a. 5つの解約した保険の返戻金を使い、継続する4つの保険の保険料を前の会社に払ってもらい名義変更し残金を現金でもらう
b. 返戻金を現金で退職金としてもらい、役員借り入れで私の会社で継続の保険料を支払う

宜しくお願い致します。



No.1 回答者:小林慶久 税理士 回答日:2014年8月4日
 ハッシーさん、はじめまして。税理士の小林慶久です。宜しく御願いします。
 貴方にとっては、納得しがたい事態の発生に御心中御察し致します。まず仰られたような状況でいらっしゃれば、ハッシーさんの御持ちの渦中の会社の株式を譲渡所得の発生しないよう額面で買い取ってもらい、残額の収受については税制上有利な退職金として受け取ることを考えるのが、貴方としては得策のような気が致します。拝読させて頂きますと、やや生命保険契約に関心が偏っておられるように見受けられますが、貴方に対しては御示しの経緯から道義的な負い目を感じていらっしゃであろう先方さんが、紛議の解決方法としての、株の買取りを強く望んでおられるのでしたら、実質的により多くの現金を支払ってもらうように仕向け、繰り返しになりますが所得税の課税されない、そのうち御持ちの株式の額面金額に達するまでの金額を株式の譲渡価額とし、残額を貴方個人への退職金で処理為されば宜しいと考えます。
 ハッシーさんが経営しておられる会社の業績が赤字ということでいらっしゃるとすると、現状を鑑みるなら、将来に向け保険に関しては、当面必要最低限の保障額に加え医療保険のようなものが賄えれば宜しいのではないでしょうか?その前に列挙されている名義変更後、解約を予定している逓増定期とガン保険につきまして、解約は先方の会社にしてもらい返戻金があるのなら、上述の如く退職金として支払うようにして頂ければと思います。その二つに限らず、貴方がどうしても必要だと思われるものだけ、名義変更の手続をとり、その他は相手方に解約してもらい、ハッシーさんとしては退職金という形で受け取った方がすっきりして宜しいのではないかと思います。
 ちなみに掛捨てタイプの生命保険であれば、名義変更の際に、金銭等の授受が無くても税金は発生しませんが、解約返戻金のあるタイプのものについては、譲渡時のその価額を対価とすることが原則であり、それが無いと、一方から別の一方へ財産が受贈されたと税務上は扱われることになるのです。保険会社さんが仰るように、契約の名義変更自体はしばしば行われるのかもしれませんが、貴方の場合ですと今のタイミングで保険契約を譲り受けることになられる、御自分の会社から退職金をハッシーさんに支払うことになれば、御社としては現在も代表取締役でいらっしゃる貴方に退職金を拠出する状況には該当しないため、税務上は否認されることになります。そして一般的な解約返戻金のある生命保険を譲り受ける場合は、会計上において以下の仕訳で表せましょう。
(借方)(保険積立金) ○○    (貸方)未払金  ○○
 要するに契約の引継ぎには、ハッシーさんの会社とすると、紛争相手の会社に対し対価の支払いが伴うため、前言の如く現預金での受取を第一に考えられ、どうしても必要な保険以外の引継ぎは前述の通り考えない方が宜しいかもしれません。改めて貴方の御質問を順次確認して見ましょう。

(1)御示しのスキームに付きまして、全く不可能では無いのですが、私が申し上げたように税務上において諸々の問題を孕んでいることに御理解下さい。
(2)先般申し上げた如く御列挙された保険のうち、本当に今後必要だと思われる純粋な保障型の掛捨てタイプのガン保険のようなものだけ、名義変更されて残りはキャッシュで退職金としてもらった方が貴方のメリットになると御理解下さい。在任期間が10年だとすると、退職金の額をXとした場合、その所得の算定は以下の方法となります。
(X - 40万円 × 10年) × 2分の1
 元々の収入がかなり軽減されるのが一一目瞭然だし、退職所得は給与所得と別建てで課税されるため、所得税の累進課税の影響も受けなくて済むのです。それゆえハッシーさんとすれば、此の度の事案に際し、再三御伝え致しました様に「譲渡所得税の課されない所有株式の額面金額に基づく対価 + プラス@の退職金」という組み合わせで御金を受け取るのが一番有利だと思われます。
(3)上記(2)を御参考にして下さい。
(4)前記の旨で申し上げ内容に包含されるとは思いますが、貴方が一連の生命保険の解約返戻金を紛議相手の会社から退職金としてもらうためには、まず先方が解約為さってハッシーさん個人に支払う形を取らなければいけません。そうすると(b)の内容は手続の流れ上無理です。仮に契約を御継続する形になるのであれば、御自身の会社の役員をお辞めになられる時に、改めてその時点で共同経営を行っていた会社の分と合わせて退職金は支払われることになります。
 それゆえハッシーさんが是が非でもこれまで関わった会社の保険契約を継続されたいということであれば、(a)の方策しか無いと思います。然(しか)れどもあくまでも上記(2)で打ち出させて頂いた方向性を最優先して頂き、将来的な資産形成を視野に入れ、どうしても前文の如く処理されたいのなら、継続を御考慮されても宜しいのですが、それに当たっては前言のように積立部分がある契約の継承に関しては、物の売買と一緒で対価の支払いが伴う旨を御留意して頂ければと願う次第です。さらに付け加えるならば、貴方が今法的な交渉を行っている会社に対し、ハッシーさん個人と御自分の会社は別人格でいらっしゃることを改めて御承知置き下さい。換言するなら貴社におかれましては、貸し借りの無いニュートラルな状態で先方との想定される保険契約の譲渡という取引に応じる必要があるのです。

 

注) この回答は回答日時現在の各種法令、規則等に従い行われております。その後の法改正等に関するフォローについてはこの回答上では行っておりません。なお、この回答は回答者の経験、知識等に基づき行われておりますが、あくまでサービスの範疇にすぎず、最終的な責任について負うものではない点ご留意ください。

回答者 千葉県市川市の小林慶久税理士事務所
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