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建物の売却
No.1514

建物の売却

お名前:もも カテゴリー:所得税 知恵袋 質問日:2013年10月26日
お尋ね致します。
個人名義の居住用建物兼事務所を親族が代表となる会社へ譲渡
しました。この場合に売却価額が簿価の2/1以下の価額となっています。みなし譲渡の適用となると思いますが第三者の法人へ同様の譲渡をした場合もみなし譲渡となりますか?
また親族の経営する法人への譲渡でも個人が居住用財産譲渡の3000万円の控除受ける事は出来ますか?
宜しくお願い致します。



No.1 回答者:小林慶久 税理士 回答日:2013年10月27日
ももさん、税理士の小林慶久です。確か、以前御質問されたことがありましたよね?
 おそらく「Hello,Again」です。私は最近、以前に買った「my little lover」のCDを聴いたりしているのですが、そんなタイトルの曲のメロディーを思い浮かべつつ、「♬この手伸ばして 前に進み 解決に向けて 答えて行こう♬」とばかりに、以下に御答え致します。
 此の度は個人所有の建物を御親族が経営為さる会社に、低額で譲り渡す際に生じる税務の問題に関する御質問ですね?そのような場合に取引価格と比較検証すべきなのは、売却時点のその建物の適正な時価ということになります。なぜなら何らかの理由で件の建物について、計上漏れ等により過年度の減価償却が過少に計上されているとすれば、そのような特殊な要因により帳簿価額に基づく評価額が、高めに認識されてしまうこともあるわけですから。厳密に評価しようとすれば、不動産鑑定士の先生に御依頼する方法もあるのですが、簡単なのは、市町村で決定される固定資産税評価額を以て、時価とされることであり、さすればその評価額は比較的低めに落ち着かれるように思われます。
 そのように為(な)されても、なおかつ固定資産税評価額の2分の1よりも低廉な、いわゆる時価よりも著しく低い価額で御親族の会社に譲渡されたような場合には、個人に対しては税務上の問題は発生しないのですが、会社側には法人税法第132条の同族会社の行為又は計算の否認、すなわち税務当局の介入による親族が絡むイレギュラーな取引価格の是正が行われるのです。そしてその法人には、正常な取引価格 ー 著しく低く設定されている譲渡価額、それを勘定科目で表すなら財産受贈益に課税が為(な)されることになります。ここで税務上問題となるケースについて、下記に整理して見ましょう。

(1)個人が親族経営の法人に世間相場よりも著しく高い価額で譲渡する場合
A、法人
(譲渡価額)-(適正な時価)に対して寄付金の認定課税がされる。
B、個人
譲渡価額より導き出される譲渡益に対して、法に則った納税を行っていれば基本的に問題無し。

(2)個人が親族経営の法人に世間相場よりも著しく低い価額で譲渡する場合
A、法人
(適正な時価)ー(譲渡価額)に対し財産受贈益として課税が行われる。
B、個人
個人に対しては基本的に問題無し。

 ももさんの御尋ねは上記(2)のケースにおきまして、取引相手が第3者の法人である場合についてですが、ごく一般的な個人については、必ずしも経済の原理を基準に生活を営んでいるわけではなく、例えば御子息の入学金等で、是が非でも早急に御金が必要で、たとえ市場価格を度外視しても財産の処分に迫られる場合なども発生するため、上述に掲げる2つの場合を設定した取引に対して記述させて頂いた如く、元々個人の課税の問題は起こらず、このような際には(2)の結果と異なり、法人の課税問題も生じません。
 最後に上述の(1)及び(2)それに加えて適正な時価で、個人が親族の経営する会社へ建物を譲渡される場合の、居住用財産の譲渡に関する3,000万円の控除についてですが、法律上におきまして概ねその親族関係者が当該会社の50%以上の株式を所有していらっしゃる場合には、前文の特例は適用不可になってしまうのです。ただし数年前に一時、敵対的買収等に絡んで「ホワイトナイト」などという言葉が一世を風靡したこともありましたが、血縁関係の無い他人が半数以上の株を所有しておられ、代表は貴方の親族とういうことであるなら、前述の特例の適用対象となります。仮にそれが可能であるならば、親族経営の会社は第3者の会社と同列になるため、貴方が質問文の前半で懸念されていらっしゃるようなことも、私の第3者の会社に対する取引を想定した既述の如く、一切気にする必要が無い事項になるかと思われます。
 要するに同族会社の株式を実害を与えず過半数を超えて保有してくれる「ホワイトナイト」の存在があれば、基本的にももさんの仰る親族経営の会社は第3者の会社に転化し、実質的な経営者の親族個人とその会社との間で、多少世間相場とかけ離れた価格で不動産に関連する取引をしても税務の問題には至らず、彼(か)の個人に対しても居住用財産を売却した場合の、3,000万円の特別控除その他の租税特別措置法の恩恵を享受することも可能になります。もっとも仮にそれが成立したとしても、本件は居住用建物兼事務所ということで、前記特別控除の対象になるのは、むろん居住用部分に限られるのです。 
 
 

注) この回答は回答日時現在の各種法令、規則等に従い行われております。その後の法改正等に関するフォローについてはこの回答上では行っておりません。なお、この回答は回答者の経験、知識等に基づき行われておりますが、あくまでサービスの範疇にすぎず、最終的な責任について負うものではない点ご留意ください。

回答者 千葉県市川市の小林慶久税理士事務所
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