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No.1047 | サラリーマン作家の事業規模の解釈 |
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お名前:サラリーマン作家A | カテゴリー:所得税 知恵袋 | 質問日:2012年8月19日 |
サラリーマンをしながら執筆活動をする場合の事業規模の考え方についてお尋ねします。 過日出版社とようやく契約に到り、ISBNがついて商業出版ルートに乗り全国有名書店で平積み展開できることとなりました。またこのため多額の初期費用を捻出してリスクを背負っています。 サラリーマン作家を事業として認めるかについては「社会通念上事業と認められるもの」を判断基準に置くとする解説が多く、「いわゆる本業でその利益から生活費を求めるもの」とたいがい書かれています。安易な事業化には歯止めがかけれています。 昭和56年4月24日最高裁判決では、事業所得とは ①自己の計算と危険において独立して営まれ ②営利性、有償性を有し ③反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生じる所得とされています。 出版業界も流通規模は様々で、全ての執筆活動を事業とできないのは了解できます。逆に何らかの賞を受賞して著名作家となった者だけが事業者とすれば上記判例を少々拡大解釈し過ぎのようにも思えます。 趣味から事業レベルへの移行は白黒はっきりつくものではないと思うのですが、どのあたりを事業レベルと考えればよいのでしょうか。書き手からすれば、独立を目指して危険も冒している訳ですが、売れるという結果がなければ事業として認められないというのは少々酷なので、お尋ねする次第です。 |
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No.1 | 回答者:西山元章 税理士 | 回答日:2012年8月19日 | |
サラリーマン作家Aさん 公認会計士・税理士の西山元章と申します。、 よろしくお願いいたします。 事業性については、明確な線引きがあるわけではなく、ケースバイケースの対応になりますが、ひとつの判断基準としては、専業作家で原稿料等を継続して得ている状態が考えられます。いくつかの賞を受賞していることが必ずしも要件ではないと思います。 所得区分で言えば、趣味レベルであれば雑所得、事業レベルであれば事業所得ということになります。 両者の差異は、たとえば、作家の仕事で生じた赤字を、他の所得と相殺できるか否か(事業所得であれば相殺可、雑所得であれば相殺不可)ということになります。 いずれにしても、取材費や資料費等の初期投資を相当額出されているということですが、これらについては、証憑書類等を揃えておくことが必要です。 注) この回答は回答日時現在の各種法令、規則等に従い行われております。その後の法改正等に関するフォローについてはこの回答上では行っておりません。なお、この回答は回答者の経験、知識等に基づき行われておりますが、あくまでサービスの範疇にすぎず、最終的な責任について負うものではない点ご留意ください。 |
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回答者 | 大阪府大阪市北区の公認会計士・税理士西山元章事務所 | ||
No.2 | 回答者:小林慶久 税理士 | 回答日:2012年8月20日 | |
サラリーマン作家Aさん、はじめまして。税理士の小林慶久と申します。宜しく御願いします。 まずは、プロ作家としての本格的な活動に向けて、栄えある一歩を踏み出されたそうでおめでとうございます。貴方が純文学とかあるいは歴史小説とかいったどのようなジャンルを志していらっしゃるのかは分かりませんが、作家とかあるいは絵画並びに音楽のようないわゆる芸術に属する分野に関して発生する収入について、そこに至るまでその業績が日の目を見るために多くの時間が費やされることも往々にしてあるため、それが事業であるか否かという判定を画一的に下すのは難しいように思います。そもそも引用された最高裁の昭和56年4月24日判決における事業所得の定義は、給与所得と区別するために一般的かつ総括的な業務としての事業を想定して述べられたものであり、サラリーマン作家Aさんの場合の今後の件の収入についての事業所得の申告に関しては、それに直接縛られず、参考までに頭の片隅に置かれれば宜しいことかと考える次第です。 そこで貴方の場合は、サラリーマンとしての歴とした給与所得があるわけですから、出版での収入が副業として、事業所得として処理すべきかあるいは雑所得のカテゴリーに属するのか、ということが税務上の主たる問題になります。私の個人的な見解としては、臨時的に依頼された雑誌の原稿料等のようなものが雑所得に該当し、今回の貴方の場合は、リスクを背負って出版事業に挑まれたわけだから、間違いなく事業所得として認識されて全く問題は無いという結論に至るのです。よって「何らかの賞を受賞して(中略)判例を少々解釈し過ぎ」との主張は仰る通りで、実際問題として継続的な原稿料等に対して事業収入としてきちんと申告しているけど、税務当局に雑所得に改めるべく修正させられたなどということはあまり聞いたことはありません。ただ、サラリーマン作家Aさんの人生的には、芥川賞等のメジャーな賞に応募して受賞を果たしてから、ステップを踏んで正式に出版という流れの方がリスクは少なくて良いような気もするのですが・・・。それはともかく貴方が出版に関する収入とそれを得るための支出を基に算定された額を事業所得として申告すれば、当面の平成24年分の確定申告に関し、御質問で仰っていらっしゃる今年の収入額に比して多額になる確率が高い初期費用の負担に伴う事業所得としての損失計上分を給与所得と相殺することにより、給与収入から源泉徴収された所得税が還付される等の実益がもたらされる可能性があるかと推察致します。 ところで、私は今、世界最高峰に君臨するベストセラーと称されている「ドン・キホーテ」を読んでいるのですが、その作者であるセルバンテスは収入面につき、それに関する版権を安く他人に譲ってしまったために不遇な生活を強いられたと伝えられ、むろん創作された時代及び社会情勢並びに国家的な背景は現代の日本とは異なりますが、この度サラリーマン作家Aさんが持ち出された昭和56年4月24日付けの最高裁判決で定義付けられた事業所得の概念に、必ずしも合致するものではありません。しかしだからと言って、それが彼の遺した文学作品の普遍的な価値を些かも喪失させるものでは無いと自分は確信致しております。 それゆえ形式的な法律の解釈に一喜一憂せず、サラリーマン作家Aさんも(おそらく)文学の徒としての高い志を抱きつつ、前に進み続けて下さい。セルバンテスの母国・スペインが誇る不屈の騎士ーあのドン・キホーテ・ラ・マンチャのように・・・。 注) この回答は回答日時現在の各種法令、規則等に従い行われております。その後の法改正等に関するフォローについてはこの回答上では行っておりません。なお、この回答は回答者の経験、知識等に基づき行われておりますが、あくまでサービスの範疇にすぎず、最終的な責任について負うものではない点ご留意ください。 |
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回答者 | 千葉県市川市の小林慶久税理士事務所 | ||
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